犬の出産:妊娠から出産まで
いざというときにあわてないためにも、犬の妊娠から出産までのながれを、しっかり頭に入れておきましょう。
◆犬の妊娠期間は、およそ60日間です。さまざまなデータによると、61日〜63日の間が最も多いようです。いずれにしても、「犬の妊娠期間は2ヶ月」と憶えておきましょう。
もっとも、交配をしたからといって、必ず妊娠するわけではありません。この点は、人間と同じです。したがって、確実に妊娠しているかどうかを確認するには、交配後30日ほどしてから超音波検査を受けて下さい。超音波検査の費用は、1,000円〜3,000円程度です。
それと、よく知られていることですが、犬は想像妊娠をよくする動物です。いわゆる「偽妊娠」ですね。つまり、飼い主が妊娠していると思いこんで、食事など高カロリーのものを与えていると、本人もその気になってどんどん食べ、ぶくぶく太ってしまう現象も起きます。こうしたことを防止する意味でも、動物病院で検査を受けておくと安心です。
◆犬の妊娠期間を、前期、中期、後期に分けた場合、前期はあまり特別なことをする必要はありません。つまり、食事も散歩もいつも通りでOKということです。ただし、交配後15日ほど経過すると、ちょっと食欲が落ちたかな、と感じることもあり、それが3,4日続くこともありますが、これは、要するに「つわり」です。症状が重かったり、長引いたりすれば別ですが、そうでなければ、あまり気にすることはないでしょう。
◆受精卵が子宮内膜に着床するのは、交配後20日を過ぎる頃です。着床すれば、胎児が成長して行くわけですから、栄養の方も徐々に増やしていく必要があります。とはいえ、いまのペットフードは、もともと栄養価が高いので、この時期はまだエサの内容を変える必要はないでしょう。高カロリーな妊婦犬用の食事に変えるのは、30日前後からでじゅうぶんです。ただし、これは人間の妊婦さんにも当てはまりますが、「お腹に子どもができたら、食事は2人分」などといって、本当に2人分くらい食べ始める人(犬)がいるようです。けれども、増やすといっても、通常の3割増程度でじゅうぶんなのです。それも、徐々に増やしていって、最終的に3割増、という意味です。2倍なんてトンでもない量です!そもそも胎児の大きさを考えてみてください。小さな小さな存在ですよ。栄養のバランスは大事だけれども、量はそんなに必要ないのです。
◆妊娠後期に入ると、お腹に赤ちゃんがいることが、はっきりわかるようになります。後期になって注意すべきことは、胎児も成長して大きくなっているので、母犬の胃は絶えず圧迫された状態になり、1度にたくさん食べられなくなる、という点です。したがって、食事は1日3,4回に振り分けて食べさせてください。そうしないと、下痢などの消化不良を起こしますから。
また、妊娠50日を過ぎた頃に、動物病院でレントゲン検査を受けておくと安心です(検査費用は、2,000円〜6,000円ほど)。何が安心かというと、まず、胎児の数が確定できます。これは重要なことで、犬の出産は数頭生まれることが普通であり、それも一度に数頭生まれるのではなく、10分〜15分間隔で次々に生まれてきます。その際、あらかじめ頭数を確認しておかないと、たとえば4頭生まれたところで、その後が続きそうもないからと、(実際にはもう1頭いるのに)さっさと片づけてしまう、なんてことも起こってしまうからです。
また、レントゲン検査には、別の目的もあります。それは、胎児の大きさを確認することです。もしも胎児が母犬の骨盤よりも大きく育ってしまっていたら、もはや自然分娩は危険であり、帝王切開に切り替えなければなりません(帝王切開の費用は、5万円から10万円程度)。
◆そして、レントゲン検査を受ける頃には、部屋のしかるべき場所に産箱を用意しましょう。出産に向けて母犬に慣れてもらう必要があるからです。
◆いよいよ出産です。人間の妊婦さんは、いまでは、ほとんどが病院で出産しますが、犬の出産は、何かリスクを抱えているのでない限り、自宅で出産するのが普通です。古来から、犬の出産は安産であることが当たり前といわれていて、実際、トラブルもなくうまくいくことが多いのですが、しかし、近年は、人間の欲求によって、品種改良に次ぐ品種改良を重ねてきた結果、犬種によっては(特に小型犬)、スムーズにことが運ばないケースが増えています。出産そのものは問題なくても、産み落とした後の子犬に対する行動に問題がある母犬が、けっこういるのが実状です。そんな場合は、飼い主が母犬の代わりになり、よき「助産師」として振る舞わなければなりません。
◆出産当日になると、母犬は、たいてい似たような行動をとることが報告されています。それは、ひんぱんにおしっこをしたりうんちをしたりすることです。これは、ものの本によると、本能に基づいた行動で、お産に際して空腹状態にしておこう、という意味を持っているそうです。つまり、逆にいうと、こうした行動を取り始めたら、いよいよ出産が始まる、と考えていいわけです。
◆また、出産の兆候は、体温の低下として現れます。犬の体温はもともと人間より高めですが、これが、出産直前になると(24時間以内)、37度台に下りてきます。やがて、いったん下がった体温が上がり始めるようになるのですが、この時に、陣痛が始まるのが普通です。犬の陣痛は、人間の陣痛と似ていて、圧迫感も最初は小さく、徐々に大きくなっていきますし、陣痛と陣痛の間隔も、しだいに狭まってきます。
◆犬の出産は、圧倒的に、深夜に集中しています。出産が始まり、胎児がお腹から出てくる際、胎児は透明な膜にくるまれて出てきます。この透明な膜は羊膜です。そして、緑色をした胎盤も、1頭につき1個でてきます。胎児がお腹から出てくると、母犬は、羊膜を噛み破り、へその緒を噛みちぎり、胎盤を食べます。スムースな出産では、こうしたことを犬自身が自分ですべてやります。しかし、産み落とすだけで、あとはおろおろするだけの母犬も中にはいます。こうした場合は、飼い主が手を貸してやらなければなりません。
◆たとえば6頭の犬が生まれたとすると、胎盤も6個出てくることになり、放っておくと、この6個の胎盤をすべて食べてしまう母犬も出てきます。母犬が胎盤を食べることは、次の陣痛を促す意味もあるようなので、特に問題行動ではないものの、あまり何個も食べてしまうと、後で消化不良を起こす事例もあり、そういう意味で、食べさせるのは、せいぜい最初の3個くらいにしておいて、あとは処分してしまう方が無難です。しかし、次の陣痛を促す意味からも、最初は食べさせる方がいいです。

